退職金制度の見直しと中小企業の問題解決

裁判事例 その3

退職の成立後に、懲戒解雇を理由に退職金を不支給にできるのか

退職願に記載された退職指定日の到来により合意退職が成立し、その後に懲戒解雇 する余地はなく、懲戒解雇を理由として、退職金請求権が発生しないとする会社の主張が否定された事例

<平成3.1.22 大阪地裁判決 O重機事件>

判決の要点
{合意退職の成立とその後の懲戒解雇の可否}

1.原告は、被告会社に対し、昭和62年4月30日付で「同年5月末日をもって退職願いたく申し上げます」と記載した退職願を提出し、同日が休日であったため、同月30日に出社し、担当部署に退職の挨拶をし、退職金計算書を受け取り、以後出社しておらず、同年6月1日以降被告会社側も出社を促すような行動をとっていないこと、雇用保険資格喪失確認通知書にも原告の離職年月日は同年5月末日と記載されていることからすると、原告、被告間の雇用契約は、原告の上述退職願が被告会社からの雇用契約の解約申し込みに対する承諾までとは認められないとしても、これによる原告からする解約申し込みに対する被告会社の承諾により、昭和62年5月末日までには合意により解約されたものと認めるのが相当である。

 

2.さらに被告会社が原告に対する懲戒解雇処分を決定したのは昭和62年6月19日の直前であったことが認められ、被告会社は、退職金を支払う意思はなかったものの、原告が退職すること自体は承認していたと認めるのが相当である。

 

3.してみると、原告、被告会社間の雇用契約は、昭和62年5月末日の経過により合意解約により終了したものというべきである。
そして、この後に被告会社が原告を懲戒解雇する余地はないものというべきであるから、原告を懲戒解雇したことを理由に退職金請求権は発生しないとする被告会社の主張は理由がない。