退職金制度の見直しと中小企業の問題解決

業績不振等を理由に、役職手当等を一方的に打ち切ることは許されるのか

賃金は労働契約の重要な要素であって、明確な根拠もなく、労働者の同意を得ることもなく、一方的に不利益に変更できないものであるから、本件不利益変更は効力は生じないとされた事例

<平成8.12.17 大阪地裁決定 M産業事件>

役職手当等削減の経緯と被告会社の主張

1.被告会社はバブル経済崩壊の影響を受け、多額の債務を抱え資金繰りが苦しくなったことから、平成7年12月頃、業務体制、給与体系を大幅に見直し改革を図ることを決め、平成8年1月から会議において業務体制、給与体系等の見直しの必要性について述べていたが、同年4月上旬の会議で、給与からの「役職手当」「その他手当」削減を提案したが、原告らは同意しなかった。
しかし、被告会社は、同年4月分から原告らの「役職手当」「その他手当」削減を実施した。

 

2.被告会社は本訴において、上述給与削減について要旨次のように主張した。
(1)「役職手当」「その他手当」という名目で支給されていた金員は、一時的恩恵的に支給していたもので、業績不振、債務超過があったら、当然カットされるものと了解していた。
(2)仮に、同手当カットに原告らの同意がなかったとしても、被告会社の業績不振、債務超過の事情により当事者間の合理的意思として、雇用主が見直しをして、歩合給的に変更させることができる。
(3)原告らの労務提供が不完全であるから、基本給と異なる臨時給的な同手当てのカットは当然できる。

 

同意のない手当の一方的不支給の可否

賃金は、労働契約内容の重要な要素であるから、明確な根拠もなく、労働者の同意を得ることなく一方的に不利益に変更することはできないものと考えるが、原告ら2名のみが役職手当、その他手当を削減されており、原告らが、当該賃金について了承していたという事実は認められず、被告会社が一方的に賃金を減額したもので、そうすると、本件において、被告会社は明確な根拠もなく、原告らの同意を得ることなく、原告らの賃金を一方的に不利益に変更したことは明らかで、何ら効力を有しないものと考える。
従って、被告会社は、平成8年5月以降も役職手当及びその他手当削減前と同一内容の賃金支払い義務を免れないものと考える。