退職金制度の見直しと中小企業の問題解決

遅刻・早退・欠勤時の賃金不控除について、就業規則を変更して減額することができるか

本件賃金控除は、労使の合意による労働契約内容であり、同意なく不利益に変更することはできず、就業規則を変更しても、当該労働契約内容には効力を及ぼさないとされた事例

<昭和46.9.13 東京地裁判決 日本K協会事件>

 

賃金に関する就業規則の不利益変更の可否

1.賃金に関する事項が当事者を拘束するのは、それが就業規則に規定され労働者に周知されたからではなく、使用者と労働者が個別的労働契約の成立要件として合意したからである。使用者の労働者に対する賃金支払義務の発生及びその内容は、当事者の合意を直接の根拠とするものであって、就業規則作成以前の問題である。

 

本件のように、遅刻・早退・欠勤(組合休を含む)の場合に賃金を控除せず全額を支払ってきたということも、原告らと被告協会の合意を根拠とするものである。
したがって、賃金に関する事項のように労働契約の要素をなす基本的労働条件については、合意によって労働契約の内容となった以上、使用者が一方的に作成した就業規則によってその内容を労働者の不利益に変更することはできないものと解すべきである。
これは、改正就業規則の内容及び改正経過が合理的か否かに関わらないことである。

 

2.けだし、契約当事者の一方が、相手方の同意を要せず契約内容を変更できることは、一般法理の認めないところである。また、使用者が行う就業規則の変更に個別的労働契約の一方的不利益変更の効力を是認するとすれば、労働条件は労使対等の立場で決すべきものとする労働基準法2条1項の精神に反し、かつ使用者は就業規則の変更によって労働条件を改悪し、間接的にその意に添わない労働者に退職を余儀なくさせることによって、解雇規制の諸規定を空文化させる結果を招来するからである。

 

いわゆる秋北バス事件についての最高裁判決は、定年制に関するものであり、定年の定めは本来当事者の合意を成立要件とする労働契約の要素をなすものではないから、合意を根拠として雇用契約の内容となる基本的労働条件には属さない。
したがって、本件のような事案に適切な判例ではない。

 

3.本件就業規則及び給与規定の改訂は労働者に不利益である。遅刻・早退・欠勤(組合休を含む)があっても、賃金を控除しないという雇用契約の内容を賃金控除を行う旨改めることが労働者にとって不利益であることは他言を要しない。そうであるとすれば、改訂就業規則及び給与規定は原告らに実質的効力を及ぼさない。
したがって遅刻・早退・欠勤(組合休を含む)があっても賃金控除をしないという原告らと被告協会との雇用契約の内容は依然として変更されていない訳である。